2026年10月インボイス制度改正【消費税仕入控除率50%への段階的引き下げ】
2023年10月1日から導入されたインボイス制度(適格請求書等保存方式)は、日本の消費税制度における大きな変化をもたらしました。この制度の最大の特徴は、消費税の仕入控除を受けるためには、適格請求書(インボイス)の保存が必須ということです。

免責事項: この記事は一般的な情報提供を目的としており、税務・法務のアドバイスではありません。個別の状況については、税理士等の専門家にご相談ください。情報は国税庁の公式情報に基づき、2026年2月時点のものです。開示: この記事はDenpyoのブログです。Denpyoはレシート管理・経費管理サービスを提供しています。
適格請求書制度(インボイス制度)とは
2023年10月1日から導入されたインボイス制度(適格請求書等保存方式)は、日本の消費税制度における大きな変化をもたらしました。
この制度の最大の特徴は、消費税の仕入控除を受けるためには、適格請求書(インボイス)の保存が必須ということです。
インボイス制度の目的:
- 消費税の適正な徴収と脱税の防止
- 仕入側の「二重課税」排除
- 売上側の透明性向上
- 帳簿と請求書の対応
インボイス制度のしくみ
従来の消費税制度との違い:
インボイス導入前は、「帳簿保存方式」で、領収書や請求書があれば、発行者が消費税納税者であるかどうかを問わず、仕入控除が可能でした。
インボイス制度後:
適格請求書発行事業者(登録事業者)からのインボイスのみが仕入控除の対象になります。
適格請求書に必須の記載事項:
- 請求書発行事業者の氏名又は名称
- 適格請求書発行事業者の登録番号
- 取引年月日
- 取引内容と税率ごとの合計額
- 消費税額
- 受け取った側の氏名または名称
2026年10月改正:仕入控除率50%への引き下げ
2026年10月1日から、インボイス制度の段階的廃止が始まります。最初の変更は、仕入控除率が80%から50%に引き下げられることです。
これは何を意味するのか?具体的に見てみましょう。
段階的な引き下げスケジュール:
| 時期 | 仕入控除率 | 状況 |
|---|---|---|
| 2024年10月〜2026年9月 | 80% | インボイス制度標準段階 |
| 2026年10月〜2028年9月 | 50% | 第一段階 |
| 2028年10月〜2030年9月 | 30% | 第二段階 |
| 2030年10月以降 | 0% | 制度廃止 |
重要:これは免税事業者からの仕入のみに適用
この新しい制度は、適格請求書発行事業者ではない事業者(免税事業者など)からの仕入に対して適用されます。
具体例で理解する控除率の変更
例1:適格請求書発行事業者からの仕入(変更なし)
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 仕入額 | 100万円(税抜き) |
| 消費税額 | 100万円 × 10% = 10万円 |
| 仕入控除額 | 10万円(100%控除可能) |
適格請求書発行事業者からの仕入は、今後も100%の控除が可能です。
例2:免税事業者からの仕入(2026年10月以降)
| 項目 | 2024年9月まで | 2026年10月以降 |
|---|---|---|
| 仕入額 | 100万円(税抜き) | 100万円(税抜き) |
| 消費税額 | 10万円 | 10万円 |
| 控除額 | 10万円 × 80% = 8万円 | 10万円 × 50% = 5万円 |
この変更により、免税事業者からの仕入にかかる消費税の3万円分が控除できなくなります。
インボイス制度の登録対象者と免税事業者
適格請求書発行事業者として登録しなければならない人:
- 前年の課税売上が1,000万円を超える事業者 — 消費税の納税義務がある。2024年から実質的に登録が事実上の義務。
- 新設法人の場合 — 設立年は売上判定がない場合がある。翌年から判定。
免税事業者とは:
免税事業者 = 前年の課税売上が1,000万円以下の事業者
重要な特性:
- 消費税の申告・納付が不要
- 消費税を請求できる
- ただし売上税を納めていない
- インボイスを発行できない
2026年改正で適格請求書発行事業者の登録を判断する際のポイント
問題:なぜ免税事業者からの仕入控除率を引き下げるのか?
日本政府は、インボイス制度の最終的な廃止を計画しています。段階的な廃止過程で、免税事業者との取引のインセンティブを減らし、最終的には登録事業者との取引に統一する目標があります。
あなたが適格請求書発行事業者として登録すべきか?
登録が「必須」の人:
- 前年の売上が1,000万円を超える — 登録は事実上の義務。2024年時点で大半の中小企業が登録済み。
- 大手企業や公共機関と取引 — これらの相手先は、ほぼ100%、適格請求書発行事業者との取引を要求。登録なしでは取引が困難。
- B2B取引がメイン — 多くの法人顧客は登録事業者との取引を前提。登録なしでは受注喪失リスク。
登録が「有利」な人:
- 売上が700万円〜1,000万円で、成長予定 — 近い将来に1,000万円超の可能性。早めの登録で取引先を確保。
- 中核となる顧客が登録を要求 — 顧客満足度向上。受注の安定化。
- 今後、公的支援や融資を予定 — 補助金申請時に登録が有利な場合がある。金融機関への信用増加。
登録が「不要」な人:
- 売上が500万円以下で、成長予定がない — 免税事業者でも顧客に大きな影響なし。登録のコストメリット評価が必要。
- B2Cメインで個人客が大部分 — 個人客は登録の有無を気にしない。消費税請求も可能なため税務上も有利。
- 取引先から登録要求がない — 免税事業者でも問題ない。登録の事務負担のみが増加。
2026年10月改正による実際の影響シミュレーション
小規模事業者向け例:年売上800万円
現状(2024年9月まで)
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 売上(消費税含む) | 800万円 |
| 消費税納税額 | 60万円(売上税) |
| 仕入(免税事業者から) | 100万円 × 20社 |
| 仕入にかかる消費税 | 100万円 × 10% = 10万円 × 20 = 200万円 |
| 控除可能額(80%) | 200万円 × 80% = 160万円 |
| 最終納税額 | 60万円 - 160万円 = マイナス(還付) |
2026年10月以降
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 売上(消費税含む) | 800万円(変わらず) |
| 消費税納税額 | 60万円 |
| 仕入(免税事業者から) | 100万円 × 20社(変わらず) |
| 仕入にかかる消費税 | 200万円(変わらず) |
| 控除可能額(50%) | 200万円 × 50% = 100万円 ← 減少! |
| 最終納税額 | 60万円 - 100万円 = マイナス(還付額が減少) |
この事業者の場合、毎年60万円の負担増加が予想されます。
適格請求書発行事業者の登録メリット・デメリット分析
登録のメリット:
- 100%の仕入控除が可能 — 売上税を100%控除できる。税務上の安定性。
- 取引先からの信用向上 — 登録事業者の証明。大手企業・公的機関との取引が可能に。
- インボイスを発行可能 — 顧客に対して適格請求書を発行。顧客の仕入控除要件を満たす。
登録のデメリット:
- 事務負担の増加 — 登録申請手続き。帳簿記載方法の変更。請求書発行方法の変更。
- 税務調査リスクの増加 — 登録事業者は調査対象になりやすい。帳簿検査がより厳密。
- 納税義務が発生 — 売上1,000万円以下でも、登録すると納税義務。
- 取引先との関係変化 — 免税事業者への支払削減が可能に。仕入側が控除率低下でコスト増加。
年間売上別の判断ガイド
売上500万円以下
登録推奨度:★☆☆☆☆(登録不要)
- 免税事業者でも顧客に大きな問題なし
- 登録のメリットが事務負担より少ない
- 登録する場合は、顧客からの明示的な要求がある場合のみ
売上500万円〜1,000万円
登録推奨度:★★☆☆☆(顧客による)
- 売上が700万円を超える場合は、将来に備えて登録を検討
- B2B取引の割合が高い場合は登録推奨
- 主要取引先が登録を要求しているか確認
- 将来1,000万円超の見通しがあるか判断
売上1,000万円超
登録推奨度:★★★★★(登録必須)
- 登録は事実上の義務
- 大多数の取引先が登録を要求
- 登録しないと取引失注リスク
- 既に登録済みの可能性が高い
FAQ:2026年10月改正についてよくある質問
Q1. 免税事業者のまま、コストを抑えるのは賢い判断か?
A1. 短期的には賢い、長期的には危険です。
2026年10月、さらに2028年10月、2030年10月と段階的に控除率が引き下げられます。その先には「制度廃止」があります。つまり、制度が完全に廃止された2030年10月以降は、免税事業者からの仕入控除が一切認められなくなります。
あなたの顧客が「登録事業者との取引が必須」という条件を付ける可能性が高い。その時になって登録すると、過去の取引条件の見直しを求められる場合もあります。
早めの登録が、長期的には経営の安定につながります。
Q2. 登録事業者の場合、2026年10月の変更は影響するか?
A2. 登録事業者同士の取引なら、影響しません。
登録事業者からの仕入は、引き続き100%の控除が可能です。
ただし、免税事業者からの仕入がある場合、控除率50%に低下します。
このため、登録事業者の多くは、免税事業者からの購入を減らすか、登録事業者への変更を促す動きが予想されます。
Q3. 新設事業の場合、いつから登録すべきか?
A3. 新設当初から登録を推奨します。
新設法人の場合、設立初年度は売上が少なくても、翌年に1,000万円を超える見通しがあれば、初年度から登録することをお勧めします。
- 取引先開拓時に「登録事業者」の信用が有利
- 登録事業者からスタートすれば、仕入控除で有利
- 免税から登録への変更は、手続きが煩雑
Q4. 2030年10月以降は、本当に免税事業者からの仕入控除がゼロになるか?
A4. 現在の法案では、そのことになっています。
| 時期 | 控除率 |
|---|---|
| 2026年10月 | 50% |
| 2028年10月 | 30% |
| 2030年10月 | 0%(廃止) |
ただし、政治・経済状況によって変更される可能性もあります。特に小規模事業者への影響が大きいため、今後の動向を注視する必要があります。
Q5. 控除率が低くなると、商品価格に転嫁される?
A5. 一部は転嫁される可能性が高い。
特にB2B取引では、仕入控除率の低下がコスト増加につながるため、売価に反映される傾向があります。
一方、B2C(個人客相手)の場合は、個人客が消費税による価格変動に敏感なため、完全な転嫁は難しい可能性があります。
2026年10月改正への具体的な対応策
1. 現在の取引状況の棚卸し
- 売上が1,000万円超か確認
- 仕入先の内訳を確認(登録事業者からの仕入、免税事業者からの仕入、比率を計算)
- 主要顧客の登録要求を確認
2. 経営判断の実施
判断フレームワーク:
Q1. 売上は1,000万円超か? → Yes:登録は事実上必須 / No:Q2へ
Q2. 主要顧客から登録要求を受けているか? → Yes:登録推奨 / No:Q3へ
Q3. 将来1〜2年以内に1,000万円超の見通しか? → Yes:早期登録推奨 / No:Q4へ
Q4. 免税事業者からの仕入が多い(30%超)か? → Yes:登録を検討 / No:登録不要、状況監視
3. 取引先対策
登録事業者の場合:
- 免税事業者からの仕入について、登録を促す
- 登録を促すインセンティブを検討
- 登録予定のない場合は、控除率低下を考慮した価格交渉
免税事業者の場合:
- 主要顧客に登録予定を伝える
- 登録後の取引条件変更の可能性を提示
- 顧客のニーズに応じた対応を検討
4. 会計・税務対応
- 会計ソフトの登録情報対応確認
- 請求書発行方法の見直し
- 経費計上方法の変更検討
- 税理士・会計士への相談
消費税納税額のシミュレーション:登録 vs 非登録
パターンA:年売上2,000万円、うち免税事業者からの仕入が30%
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 年間売上 | 2,000万円(税抜き) |
| 消費税売上税 | 200万円 |
| 仕入合計 | 1,000万円 |
| 登録事業者からの仕入 | 700万円 |
| 免税事業者からの仕入 | 300万円 |
| 登録事業者からの仕入税 | 70万円(100%控除可) |
| 免税事業者からの仕入税 | 30万円(控除率50%の場合15万円控除) |
登録事業者の場合
| 項目 | 2024年9月まで | 2026年10月以降 |
|---|---|---|
| 売上税 | 200万円 | 200万円 |
| 仕入税控除 | 70万円 + 30万円 × 80% = 94万円 | 70万円 + 30万円 × 50% = 85万円 |
| 最終納税額 | 200万円 - 94万円 = 106万円 | 200万円 - 85万円 = 115万円 |
影響:21万円の負担増加
免税事業者のままの場合
売上税納税は不要。ただし、顧客側の仕入控除率低下により、取引先から登録要求が高まる可能性があります。
よくある誤解と注意点
誤解1:「適格請求書がなければ、その仕入は全く控除できない」
正解:2024年4月から2026年9月までは、適格請求書がない仕入でも一部(80%)の控除が可能です。ただし、2026年10月以降は段階的に低下します。
誤解2:「免税事業者は消費税を請求してはいけない」
正解:免税事業者も消費税を請求することは可能です。請求しても納税義務はありません。ただし、顧客側では仕入控除ができないため、実際上は請求しない傾向が強まっています。
誤解3:「2026年10月に登録を開始すれば、遡及的に前年の控除を受けられる」
正解:登録は申請時から効力が発生します。遡及的な登録や控除請求はできません。登録の時期を慎重に判断する必要があります。
国税庁参考資料
日本の消費税制度の公式情報については、以下の国税庁参考資料をご参照ください:
- 適格請求書発行事業者の登録について:国税庁公式サイト
- 消費税の申告義務と控除の判定:国税庁公式サイト
まとめ:2026年10月改正への対応ロードマップ
今すぐすべきこと(2026年1月〜3月)
- 取引状況の確認 — 現在の売上と仕入先の確認。登録状態の確認。
- 顧客・仕入先への確認 — 主要顧客の登録要求状況を確認。仕入先の登録状態を確認。
- 専門家への相談 — 税理士・会計士へ相談。経営判断をサポートしてもらう。
2026年4月〜9月:準備期間
- 登録申請(必要な場合) — 登録申請書の作成・提出。登録番号の取得。請求書フォーマットの変更。
- 会計体制の整備 — 会計ソフトの対応確認。従業員への教育・訓練。
2026年10月:改正施行
新しい控除率(50%)での申告・納税開始。


