マレーシア2027年度予算の税制改正:フリーランスと中小企業はどう変わるか

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マレーシア2027年度予算の税制改正:フリーランスと中小企業はどう変わるか

2026年10月9日に提出されたマレーシアの2027年度予算は、個人控除のRM12,000への引き上げ、個人とMSMEの税率引き下げ、控除の拡充をYA2027から提案しています。個人事業主や零細企業に届く内容と、まだ提案にとどまる点を整理します。

2026年11月1日
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マレーシア2027年度予算の税制改正:フリーランスと中小企業はどう変わるか

本記事は、マレーシアのフリーランス、個人事業主、小規模事業者向けの一般的な情報であり、税務アドバイスではありません。2027年度予算(Budget 2027)の各措置は、それを実施する法律が施行されるまでは「提案」にすぎません。正式な情報源はマレーシア財務省(MOF)の2027年度予算 税制措置とマレーシア内国歳入庁(LHDN / HASiL)です。行動する前に、ご自身の状況をLHDNまたは税務代理人にご確認ください。

フリーランスとして働いている方、一人で事業を営んでいる方、小さなSdn Bhd(非公開株式会社)を所有している方にとって、マレーシアの2027年度予算の税制改正はおおむね朗報です。ただし、実際に効いてくるのは見出しから受ける印象よりも後になります。アンワル・イブラヒム首相兼財務相は、2026年10月9日(金)に下院(Dewan Rakyat)で2027年度予算案を提出しました。個人控除は2010年以来初めて引き上げられ、2つの所得区分の税率が下がり、小規模企業には軽減税率が設けられ、身近な控除のいくつかは対象が広がります。そのほぼすべてが賦課年度(Year of Assessment、YA)2027からの適用として提案されています。つまり、2027年に得た所得を2028年に申告する分からです。本ガイドでは、財務省の税制措置付録(tax-measures appendix)から各措置を直接読み解き、実際に誰に影響するのかで整理します。

要点

  • 個人および扶養親族控除(individual and dependent relatives relief)は、YA2027からRM9,000からRM12,000へ引き上げられる予定です。YA2010以来、初めての変更です。
  • 課税所得RM70,001~RM100,000に対する居住者の税率は19%から18%へ引き下げられ、新設されるRM100,001~RM150,000の区分には25%ではなく24%が適用される予定です(いずれもYA2027から)。
  • 要件を満たす小規模企業とLLP(有限責任パートナーシップ)には、YA2027から最初のRM150,000に14%、RM150,001~RM600,000に16%の税率が提案されています。個人事業主は個人として課税されるため、この税率は適用されません。
  • 2027年度予算には電子インボイス(e-Invoice)に関する新たな措置はありません。重要なのは別途発表された変更で、LHDNの免除基準が2026年9月1日からRM100万からRM300万へ引き上げられました。
  • 2026年の所得(2027年に申告)は、引き続きRM9,000の控除と現行の税率で計算されます。

Belanjawan 2027(2027年度予算)の税制改正は、まだ法律ではなく「提案」

予算演説は政策を発表するものであり、税制改正が法的な効力を持つのは、それを実施する法律が整ってからです。所得税の場合は、議会で財政法案(Finance Bill)が可決される必要があります。Baker McKenzieが指摘しているとおり、これらの提案は「関連法令の制定を条件とする」ものです。執筆時点(2026年11月1日)では当該法案をまだ確認できていないため、以下の数字はすべて提案段階のものとしてお読みください。

もう一つ押さえておきたいのが「年」です。ほとんどの措置には「賦課年度2027から」と書かれています。LHDNの申告書提出プログラム(filing programme)を見ると、その仕組みがわかります。事業を営む居住者個人向けのYA2025のForm B申告書の提出期限は2026年6月30日でした。同じパターンに従えば、YA2027は2027年に得た所得が対象で、新しい控除は2028年の申告時に請求することになります。2027年に2026年分の所得を申告するときは、引き続きRM9,000の控除と現行の税率表を使います。その申告には、2026年分の個人所得税控除の請求ガイドがそのまま役立ちます。

2027年度予算の個人控除と所得税率

個人事業主は、税務上は個人として扱われます。LHDNはForm Bを「事業を営む居住者個人」向けの申告書と説明しており、事業利益は給与と同じ累進税率表で課税されます。そのため、フリーランスにとって最も重要なのは個人向けの措置です。

個人控除。個人および扶養親族控除は、YA2010以来RM9,000のまま据え置かれてきました。2027年度予算では、YA2027からRM12,000への引き上げが提案されています。居住者個人の場合、税率を適用する前の課税所得がさらにRM3,000減ることになります。

税率。居住者個人の税率表について提案されている変更は次のとおりです(すべてYA2027から)。

課税所得(RM)現行税率YA2027からの提案税率
70,001~100,00019%18%
100,001~150,00025%24%(新設区分)
150,001~400,00025%25%(変更なし)
600,001~1,000,00028%28%
1,000,000超RM2,000,000までは28%、それを超える部分は30%30%

表にない区分(RM0~RM70,000、および26%のRM400,001~RM600,000)は変更ありません。最上位では、30%の税率がRM200万超ではなくRM100万超から適用されることになります。予算演説での政府自身の試算によると、控除の引き上げと税率の引き下げを合わせて、約500万人の納税者の可処分所得が最大RM1,600増えるとされています。

フリーランスが実際に使う、拡充される控除

既存の控除のうちいくつかは、上限額はそのままで、YA2027から対象となる支出が広がります。

  • ライフスタイル控除(上限RM2,500、変更なし):本人、配偶者、子どもが個人的に使うAIソフトウェアやアプリのサブスクリプションに加え、登録動物保護施設からのペットの譲受け、登録獣医による予防接種と避妊・去勢手術も対象になります。
  • スポーツ関連ライフスタイル控除(上限RM1,000、変更なし):スポーツシューズが加わります。ただし、RM1,000の枠内でRM300が上限です。
  • 教育・技能訓練費控除(RM7,000):認定されたサーティフィケート(Certificate)から博士課程(PhD)までの学業が、分野を問わず対象になります(修士未満はこれまで特定分野に限られていました)。本人または配偶者のTVET(技術職業教育訓練)によるスキルアップは最大RM3,000、本人または配偶者の仕事以外の講座、または子どものSTEM・芸術・語学・宗教の教室や塾は最大RM2,000まで対象です。
  • 健康・ウェルビーイング控除(RM10,000):名称が変わる医療費控除で、産後ケアセンター(confinement centre)または有資格者による産後ケアが最大RM3,000まで加わり、授乳用品(RM1,000)もこの控除に統合されます。
  • 両親・祖父母の介護控除(RM8,000):在宅介護、デイケア、施設介護は、医療的なケアに限らずあらゆる種類のケアが対象となり、登録医師による証明も不要になります。介護者の書面による申告書または就労許可証と、領収書が必要です。
  • 国内旅行控除(最大RM1,000):観光施設や文化プログラムの入場料が対象で、YA2027まで延長されます。
  • SOCSO(社会保障機構)関連控除(RM350、さらに新たにRM150):RM350の控除は、3つの加入義務業種(旅客輸送、貨物・食品輸送、露天商)におけるLINDUNG Kendiriの義務的拠出もカバーするようになります。さらに最大RM150が、任意のLINDUNG 24拠出と、17の任意加入業種でのLINDUNG Kendiri拠出に適用されます。

なお、AI関連の控除は個人利用を前提とした文言になっています。事業所得を得るために全額かつ専ら(wholly and exclusively)支出したサブスクリプションは、1967年所得税法(Income Tax Act 1967)第33条に基づく事業経費になるため、両者は分けて記録しましょう。

2027年度予算のマレーシアSME向け措置:零細事業者に届くもの

会社とLLP向けのMSME税率引き下げ。税制措置付録では、MSME(零細・中小企業)を、払込普通株式資本がRM250万以下の会社、または出資額がRM250万以下のLLPで、年間売上高がRM5,000万を超えないものと定義しています。法律上のその他の要件も引き続き適用されます。YA2027からの提案税率は次のとおりです。

  • 課税所得の最初のRM150,000:15% → 14%
  • RM150,001~RM600,000:17% → 16%
  • RM600,000超:24%(変更なし)

演説では、30万社を超えるMSMEにとって年間最大RM6,000の恩恵になるとしています。個人事業主として事業を行っている場合、この引き下げは適用されません。代わりに、上で説明した個人向けの変更で恩恵を受けます。

少額資産。YA2027から、少額資産として全額を償却できる資産1件あたりの金額をRM2,000からRM3,000へ引き上げることが提案されています。MSME以外の会社については、年間の総額上限もRM20,000からRM30,000へ引き上げられる予定です。LHDNの公開裁定(Public Ruling)No. 4/2026に基づく現行ルールでは、年間上限がないのは要件を満たす零細・中小の会社だけで、その他の会社やLLPは年間RM20,000が上限です。予算文書は新しい上限を会社の観点でしか説明していないため、個人事業主やLLPは、上限が自分にどう適用されるかを最終的な財政法案の文言で確認してください。

加速償却控除(ACA)の延長。国内メーカーから購入した機械・一般設備、ICT機器、コンピュータソフトウェアパッケージなどの対象支出に対する加速償却控除(Accelerated Capital Allowance。初年度控除20%と年次控除40%で、2年以内に全額を償却)を、2027年1月1日から2030年12月31日までに生じた支出へ延長することが提案されています。付録では、これを会社向けのインセンティブと位置づけています。

P2Pファイナンスの書類コストが軽減。MSMEと投資家の間のP2Pローン・ファイナンス契約は、現在2026年12月31日まで印紙税が全額免除されています。2027年1月1日から2030年12月31日までは、これらの契約の印紙税をわずかRM10とすることが提案されています。

従業員を雇用している場合。YA2028から、MSME以外の会社は、金融機関またはキャッシュレス決済手段を通じて支払った給与についてのみ損金算入(tax deduction)が認められるとする案が予算に盛り込まれています。税制以外では、最低賃金が2027年6月からRM1,700からRM2,000へ引き上げられる予定ですが、年間売上高RM5,000万未満のMSMEは「調整の余地を与えるため」適用が除外されます。

SSTと電子インボイス:2027年度予算で変わったこと、変わらなかったこと

SST(売上・サービス税)。税制措置付録に含まれる間接税の項目は限られています。高齢者介護サービスに対するサービス税は2027年1月1日から8%から6%へ引き下げられる予定で、関連する介護法に基づいて登録された施設では、1人あたり年間RM96,000までの介護費用が全額免除されます。これとは別に、製造業者に供給する機械、スペアパーツ、設備(および医薬品、動物飼料、肥料、農薬の特定の原材料)について売上税を支払った国内の商社・販売業者は、2027年1月1日から還付を受けられるようになります。3つ目の項目として、旅行者がランカウイとラブアンから輸入関税と売上税なしで持ち出せる物品の価額が、2027年1月1日からRM10,000へ引き上げられます。Deloitteは、議論を呼んでいたSSTとGSTのハイブリッド方式が盛り込まれなかったことを指摘しています。これらの分野以外では、SSTの取り扱いに変更はありません。基本はフリーランス向けSSTガイドで解説しています。

電子インボイス。予算演説にも税制措置付録にも、電子インボイスに関する措置は含まれていません。重要な変更は別途行われました。首相の独立記念日(National Day)演説を受けて2026年8月30日に出したメディア声明で、LHDNは、政府が電子インボイス(e-Invoice)導入の基準額をRM100万からRM300万へ引き上げることに合意したと発表しました。適用は2026年9月1日からです。年間所得または売上高がRM300万未満のMSMEには、電子インボイスの導入義務がありません。LHDNによると免除対象の事業者は110万を超えており、政府は引き続き任意での導入を推奨しています。免除を前提にする前に、LHDNの電子インボイスガイダンスに記載された条件を確認してください。詳細はLHDNのe-Invoiceマイクロサイトに掲載されています。

2026年末までにやっておくこと

  1. 2026年分は現行ルールで申告する。2026年の所得には、RM9,000の控除と現行の税率区分が適用されます。
  2. 2027年用の控除フォルダを用意する。1月から、個人用のAIサブスクリプション、スポーツシューズ、ペットの予防接種や譲受け、産後ケア、子どもの塾、両親の介護の領収書を保管しましょう。
  3. 個人用と事業用のサブスクリプションを分ける。事業用ツールは事業経費、個人用のものはライフスタイル控除の対象です。
  4. Sdn BhdまたはLLPのオーナーの方:14%の税率を当てにする前に、MSMEに該当するかを税務代理人に確認してください。
  5. 電子インボイスの対応状況を確認する。判断の基準は旧基準のRM100万ではなく、RM300万です。
  6. 財政法案の動向を注視する。計画の前提にしている措置が、変更なく残っているかを確認しましょう。

計算例:フリーランスと小さなSdn Bhd

説明のための数字です。両年とも同じ所得とし、現行の税率表とYA2027の提案税率表を用いています。計算過程を見やすくするため、税額控除(rebate)、ザカート(zakat)、その他の控除は考慮していません。

個人事業主のアイシャさん。アイシャさんはペナン在住のフリーランスのグラフィックデザイナーです。認められる事業経費を差し引いた後の事業所得はRM110,000です。個人控除と、RM2,500のライフスタイル控除を請求します。

  • 現行ルール:RM110,000 − RM9,000 − RM2,500 = 課税所得RM98,500。税額は、最初のRM70,000に対するRM3,700に、RM28,500の19%(RM5,415)を加えたRM9,115です。
  • YA2027の提案ルール:RM110,000 − RM12,000 − RM2,500 = 課税所得RM95,500。税額は、RM3,700にRM25,500の18%(RM4,590)を加えたRM8,290です。

所得は同じでも、税額はRM825少なくなります。そのおよそ3分の2は控除の拡大、3分の1は18%の税率によるものです。2027年に個人用のAIサブスクリプションを契約しても、RM2,500のライフスタイル控除の上限に上乗せされるのではなく、その枠内に収まります。

Kedai Rimba Sdn Bhd(要件を満たすMSME)。課税所得がRM200,000の小さなオンライン小売業者の場合:

  • 現行税率:RM150,000の15%(RM22,500)+RM50,000の17%(RM8,500)=RM31,000
  • YA2027の提案税率:RM150,000の14%(RM21,000)+RM50,000の16%(RM8,000)=RM29,000

税額はRM2,000少なくなります。最大のRM6,000に達するのは、課税所得がRM600,000に達した場合だけです。

2027年の領収書を整理しておく

2027年度予算による恩恵の多くは、申告のずっと前、2027年のうちに集める領収書にかかっています。Denpyoはその部分を担います。領収書を撮影するだけで、AIが日付、取引先、金額、税額を読み取り、推定節税額を表示し、会計士に渡せる整ったファイルを書き出します。ご自身の数字で試算するなら、無料の所得税計算ツールをお試しください。購入したものが事業経費なのか個人控除の対象なのか迷ったときは、経費計上可否チェッカーが最初の手がかりになります。

よくある質問

マレーシアのRM12,000の個人控除はいつから始まりますか?

賦課年度2027からの適用が提案されています。2027年に得た所得が対象で、2028年の申告時に請求します。2027年に2026年分の所得を申告する際の控除額は、引き続きRM9,000です。また、2027年度予算を実施する財政法案が議会で可決されることが前提です。

個人事業主にも2027年度予算の14%のSME税率は適用されますか?

いいえ。MSME税率が適用されるのは、要件を満たす会社と有限責任パートナーシップ(LLP)です。個人事業主は居住者個人としてForm Bで申告するため、事業利益は個人の税率表で課税されます。個人事業主は代わりに、RM12,000の控除と18%・24%の税率区分の恩恵を受けます。

2027年にAIアプリのサブスクリプションを控除として請求できますか?

YA2027から、ライフスタイル控除の対象に、本人、配偶者、子どもが個人的に使うAIソフトウェアやアプリのサブスクリプションを加えることが提案されています。既存のRM2,500のライフスタイル控除の上限を共有します。全額かつ専ら事業のために使うサブスクリプションは、控除項目ではなく事業経費になります。

2027年度予算でSSTの税率は変わりましたか?

ごく限定的です。高齢者介護サービスに対するサービス税は2027年1月1日から8%から6%へ下がり、登録施設では1人あたり年間RM96,000までの介護費用が免除されます。製造業者への特定の供給品について売上税を支払った事業者は還付を受けられるようになり、ランカウイとラブアンから持ち出す物品の免税枠はRM10,000へ引き上げられます。税制措置付録には、それ以外のSST税率の変更は記載されていません。

2027年度予算で電子インボイスの基準額は変わりましたか?

いいえ。予算には電子インボイスに関する措置は含まれていません。LHDNは2026年8月30日の別の発表で、電子インボイス導入の基準額を2026年9月1日付でRM100万からRM300万へ引き上げました。年間所得または売上高がRM300万未満のMSMEには、電子インボイスの導入義務がありません。

まとめ

多くのフリーランスにとって、2027年度予算はささやかながら確かな減税です。RM12,000の個人控除、RM70,001~RM100,000の区分に対する18%の税率、RM150,000までの新しい24%の区分、そして自営業者がすでに支払っているものを対象とした控除の拡充が含まれます。要件を満たす小規模企業とLLPには、14%と16%の税率と、少額資産の1件あたり上限の引き上げがあります。SSTの変更は高齢者介護、製造業者に供給する事業者、離島の免税枠に限られ、電子インボイスはそもそも予算に含まれていませんでした。

財政法案が可決されるまでは、どれも法律ではありません。また、YA2027の変更はいずれも、2027年に提出する申告には影響しません。今できる有効な一手は、1月から2027年の領収書を控除の区分ごとに集め、2028年の申告に備えることです。

参考資料

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