個人事業主の決算準備チェックリスト|12月31日までにやる棚卸・減価償却・65万円控除の確認【令和8年分】
個人事業主の決算は12月31日が基準日です。棚卸と最終仕入原価法、12月納品分の売上、未払・前払費用、減価償却、家事按分、そして令和8年分の青色申告特別控除65万円の要件を、国税庁の資料に沿って12月のチェックリストにまとめました。令和9年分からの控除の変更点も解説します。

本記事は、個人事業主・フリーランスの方向けに令和8年分(2026年分)の決算準備を整理した一般的な情報であり、税務アドバイスではありません。制度の正式な内容は、国税庁タックスアンサー「No.2072 青色申告特別控除」や国税庁「決算のしかた(青色申告編)」などでご確認ください。個別の判断は、所轄の税務署または税理士にご相談ください。
個人事業主の決算準備は、確定申告が始まる2月ではなく、12月が本番です。所得税は1月1日から12月31日までの1年間の所得を計算する仕組みで、棚卸は原則として12月31日に行い、経費になるかどうかも「12月31日までに債務が確定しているか」で決まるからです。年が明けてから1年前の在庫を正確に数え直したり、1年分の取引を思い出して売上と経費を振り分けたりするのは大変です。12月のうちに準備しておくほど、2〜3月の作業が楽になります。
しかも令和8年分は、紙の申告書でも55万円の青色申告特別控除を受けられる最後の年です。この記事では、12月31日までに片付けたい作業を、売上と経費の締め・棚卸・減価償却・家事按分・65万円控除の要件確認の順に、国税庁の資料に沿って整理します。2〜3月の申告期間の流れは確定申告の期限カレンダーをご覧ください。
この記事の要点(Key Takeaways)
- 棚卸は原則として12月31日に在庫を実地で数え、評価方法を届け出ていなければ最終仕入原価法(年末に一番近い仕入単価 × 数量)で評価します。
- 12月中に納品した仕事は、請求書を出すのが1月でも令和8年分の売上です。逆に、12月31日までに債務が確定した経費は、未払いでも令和8年分の経費になります。
- 青色申告者の少額減価償却資産の特例は、令和8年4月1日以後の取得分から40万円未満(合計300万円まで)に広がりましたが、経費になるのは業務に使い始めた年です。
- 令和8年分の青色申告特別控除は現行どおり65万円・55万円・10万円で、65万円にはe-Taxでの期限内提出(2027年3月15日まで)または優良な電子帳簿の保存が必要です。
- 令和9年分からは書面申告の上限が10万円になります。優良な電子帳簿で75万円控除を目指すなら「課税期間の最初から」要件を満たす必要があるため、2027年1月1日からの帳簿の付け方を12月中に決めておきましょう。
なぜ「12月31日」が個人事業主の締め日なのか
国税庁の「決算のしかた(青色申告編)」では、記帳から申告までの流れを「日々の記帳 → 決算(年末)→ 確定申告(2〜3月)」と示しています。2〜3月にするのは申告書の作成と提出で、その材料になる決算は年末の作業です。12月31日が基準になる場面は、主に次の3つです。
- 在庫:棚卸は原則として12月31日に行います。
- 経費:必要経費になるのは、その年の12月31日までに①債務が成立し、②具体的な給付をすべき原因となる事実が発生し、③金額を合理的に算定できるものです(国税庁 No.2210)。支払ったかどうかでは決まりません。
- 資産:パソコンなどの減価償却資産は、買った日ではなく業務の用に供した(使い始めた)年の経費になります。
申告期間は原則として翌年2月16日から3月15日までで(国税庁 No.2020)、令和8年分なら2027年2月16日(火)から3月15日(月)です。e-Taxで出すか紙で出すかで控除額が変わるため、提出方法も12月のうちに決めておくと安心です。
12月31日締めまでの決算準備チェックリスト(売上・経費・棚卸・減価償却・家事按分)
1. 帳簿と領収書を照合し、科目ごとの累計を出す
帳簿の内容と、納品書・請求書・領収書などの原始記録を突き合わせ、誤りがあれば訂正します。そのうえで、科目ごとに1月から12月までの累計を計算します。12月前半にここまで終えておけば、年末は差分の調整だけで済みます。
2. 売上を締める:12月納品・1月請求の分を忘れない
代金をまだ受け取っていなくても、その年中に売り上げたものはすべてその年分の収入金額です。国税庁の資料では「毎月20日締め、25日請求、翌月10日入金」の例で、12月21日〜31日に納品した分は、未請求でも12月31日付で売掛金(売上)として計上すると説明しています。月末締め・翌月請求のフリーランスほど、12月分の計上漏れに注意しましょう。反対に、まだ引き渡していないのに先に受け取った前受金は、その年の収入金額から除きます。
3. 経費を締める:未払費用と前払費用の整理
- 未払費用:12月分の地代家賃などで年内に払っていないものは、未払経費としてその年分の必要経費にします。少額な経費は、未払いの整理をせず実際に支払った金額だけを経費にしても差し支えありません。
- 前払費用:年内に払った経費に翌年以後の分が含まれていれば、その部分は原則として翌年以後の経費です。ただし、支払った日から1年以内に提供を受ける役務の費用で、毎年継続して支払った年の経費にしている場合は、支払った年の経費にできます(所得税基本通達37−30の2)。
- 固定資産税の第4期分:納期が翌年2月の第4期分は、その年分の未払経費にしても翌年分の経費にしても構いません(必要経費になるのは業務用の部分のみ)。
4. 12月31日に棚卸をする(個人事業主の棚卸の基本)
売上原価は、その年の仕入高そのままではなく、次の式で計算します。消耗品費も同じ考え方です。
売上原価 = 年初(期首)の棚卸高 + 年間の仕入高 − 年末(期末)の棚卸高
- 対象:商品・製品・原材料などに加え、包装材料・ガソリン・事務用品などの消耗品や、取得価額10万円未満などの少額な備品でまだ使っていないものも棚卸資産です。通常の年と比べて特に増えていない消耗品などは、棚卸しを省略しても差し支えありません。
- 時期:原則は12月31日です。できない場合は前後のできるだけ近い日に行い、その日から12月31日までの取引をもとに12月31日現在の棚卸高を計算し、計算方法を明らかにしておきます。
- 方法:種類・品質・型などの別に数量を実地に調べ、棚卸表に数量・単価・金額を記入します。
- 評価:評価方法を届け出ていなければ最終仕入原価法(年末に一番近い時期に仕入れた単価 × 年末の数量)です。破損品や棚ざらし品は、12月31日現在の処分可能価額でも構いません。
選んだ評価方法を変えるには、届出ではなく変更承認申請書が必要です(国税庁 A1-17)。12月は方法を変える時期ではなく、決めた方法で正しく数える時期です。
5. 減価償却を確認する
事業用のパソコンや車などは、取得価額を法定耐用年数にわたって分割し、各年分の必要経費にします(国税庁 No.2100)。12月は固定資産台帳を開いて、次を確認します。
- 年の途中で買った資産は月割り:1年分の償却費を12で割り、その年に業務に使っていた月数を掛けます(国税庁 No.2106)。
- 10万円未満、または使用可能期間1年未満:業務に使い始めた年に全額が必要経費です。
- 10万円以上20万円未満:一括償却資産として、合計額の3分の1ずつを3年間で経費にする方法を選べます。
- 少額減価償却資産の特例(青色申告者):一定の要件を満たす青色申告者は、合計300万円までを業務に使った年に全額経費にできます。対象は令和8年4月1日以後の取得分から10万円以上40万円未満に広がりました(令和8年3月31日までの取得分は10万円以上30万円未満)。同じ35万円のパソコンでも、2026年3月に買ったものは対象外、5月に買ったものは対象です。
- 税込か税抜か:金額の判定は経理方式により、免税事業者は税込で判定します。
年末に機材を駆け込みで買う場合は、12月31日までに届いて実際に使い始めているかを確認しましょう。
6. 家事按分を1年分まとめて集計する
自宅兼事務所の家賃や水道光熱費のような家事関連費は、事業分だけが必要経費になります。国税庁は、取引の記録などに基づいて業務上直接必要であったことを明らかに区分できる金額に限られるとしています(No.2210)。所得税基本通達45−2は、業務上必要な部分が50%を超えるかで判定しつつ、50%以下でも明らかに区分できればその部分を経費にして差し支えないとしています。
毎月按分する必要はありません。国税庁の記帳例では、12月31日に「水道料金の家事分除外(60,000×80%家事分)△48,000」のように、家事分を年末にまとめて差し引く方法が示されています。按分は使用面積・保険金額・点灯時間などの適切な基準で行います。12月は1年分の家賃・電気代・通信費の合計と、割合の根拠をそろえる月にしましょう。割合の考え方は家事按分の計算方法で解説しています。
青色申告65万円の要件を確認する(令和8年分)
令和8年分の青色申告特別控除は、現行の3区分です(国税庁 No.2072)。
| 控除額 | 主な要件 |
|---|---|
| 65万円 | 55万円の要件に加え、①確定申告書・貸借対照表・損益計算書等を期限までにe-Taxで送信する、または②その年分の仕訳帳と総勘定元帳を優良な電子帳簿の要件を満たして保存し、期限までに届出書を提出する |
| 55万円 | 事業所得または不動産所得を生ずべき事業を営み、正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)で記帳し、貸借対照表・損益計算書等を添付した確定申告書を期限(翌年3月15日)までに提出する |
| 10万円 | 上記の要件に該当しない青色申告者 |
- 期限を過ぎると10万円:55万円・65万円は期限内の提出が条件で、還付申告でも翌年3月15日までに提出が必要です。
- e-Taxはイメージデータ不可:決算書類をイメージデータで送信することはできません。国税庁の確定申告書等作成コーナーなら青色申告決算書のデータも作成・送信できます。
- 現金主義の特例を選んでいる場合、55万円・65万円の控除は受けられません。
- 優良な電子帳簿は「その年分」の帳簿が対象:訂正・削除・追加の履歴、帳簿間の相互関連性、日付・金額・相手方での検索機能などの要件を満たして、その年分の仕訳帳と総勘定元帳を保存している必要があります。12月の時点で現実的な65万円のルートはe-Taxです。
令和9年分から変わること:12月に決めておきたい「1月1日からの帳簿」
令和8年度税制改正により、令和9年分以後の青色申告特別控除は次のように変わると国税庁が案内しています(国税庁リーフレット)。
- 75万円:複式簿記とe-Taxに加え、優良な電子帳簿の保存、または「デジタルシームレス保存」(国税庁長官が定める基準に適合するシステムでの電子取引データの保存)を行い、期限までに届出書を提出する場合。
- 65万円:複式簿記とe-Tax。
- 10万円:複式簿記でも書面で申告する場合。簡易簿記の10万円控除は、前々年の事業所得または不動産所得に係る収入金額が1,000万円以下の方などに限られます。
見落としやすいのは、75万円の優良な電子帳簿ルートで、国税庁が「課税期間の最初から」要件を満たした備付け・保存を求めている点です。令和9年分に優良な電子帳簿のルートで75万円を目指すなら、2027年1月1日の最初の仕訳から要件を満たす会計ソフトで記帳することになります。ソフトの乗り換えや設定は12月のうちに済ませましょう。
具体例:ネットで雑貨を販売するAさんの12月(数字は説明用の架空例)
以下の数字はすべて説明のための架空の例です。Aさんは自宅の一室を作業・在庫スペースにして雑貨をネット販売する青色申告の個人事業主で、消費税は免税事業者、会計ソフトで複式簿記をつけています。
| 項目 | 12月の状況(架空例) | 令和8年分の扱い |
|---|---|---|
| 棚卸 | マグカップ40個 × 最終仕入単価900円 = 36,000円、トートバッグ25個 × 1,600円 = 40,000円、欠けのあるマグ3個は処分可能価額1個200円 = 600円 | 年末棚卸高 76,600円 |
| 売上原価 | 年初棚卸高52,000円 + 年間仕入高1,380,000円 − 年末棚卸高76,600円 | 1,355,400円 |
| 売上の締め | 12月26日〜31日に発送した注文の代金85,000円が1月に入金 | 令和8年分の売上(未収入金) |
| 未払費用 | 12月に発送した分の配送料18,000円の請求が1月に届く | 令和8年分の経費(未払経費) |
| 前払費用 | 12月にネットショップの年額プラン39,600円を支払い、毎年同じ処理をしている | 支払った年の経費にできる |
| 家事按分 | 家賃年120万円 × 事業用面積25% = 30万円、電気代年15万円 × 使用時間30% = 4.5万円 | 12月31日に家事分90万円・10.5万円を差し引く |
| 減価償却 | 11月に36万円のノートPCを購入し、同月から仕事で使用 | 少額減価償却資産の特例で36万円を全額経費にできる |
| 青色申告特別控除 | 2027年3月15日までにe-Taxで提出する予定 | 65万円(書面なら55万円) |
ポイントは3つです。まず、年末の棚卸を省くと年末棚卸高76,600円が売上原価から差し引かれず(売上原価が1,432,000円になる)、所得が76,600円少なく計算されてしまいます。次に、12月末に発送した85,000円の売上と18,000円の配送料は、入金や支払いが1月でも令和8年分です。最後にノートPCは、特例を使わなければ法定耐用年数4年(パソコン)で償却し、令和8年分の経費は11月と12月の2か月分だけになります。届いて使い始めたのが1月なら令和9年分の扱いです。
なお、65万円控除と55万円控除の差は、所得から差し引く金額で10万円です。税額がいくら変わるかは、所得や税率によって異なります。
領収書の整理は12月に前倒しする
決算準備で一番時間を取られるのは、計算よりも「1年分の領収書がどこにあるか」を探す作業です。Denpyoなら、レシートや請求書をスマホで撮影するだけでAIが日付・取引先・金額・勘定科目を読み取り、経費ごとの節税効果の目安も表示します。データは税理士や会計ソフト向けに書き出せるので、年末の照合にもそのまま使えます。経費になるか迷う支出は無料の経費判定チェッカーで、65万円控除と55万円控除の差は所得税計算ツールで所得金額を10万円ずらして比べてみてください。
よくある質問(FAQ)
在庫を持たないフリーランスでも棚卸は必要ですか?
販売用の商品がなければ商品の棚卸はありませんが、包装材料や事務用品などの消耗品、まだ使っていない取得価額10万円未満の備品なども棚卸資産です。ただし、通常の年と比べて特に増えていない消耗品などは、棚卸しを省略しても差し支えないとされています。
12月31日に棚卸ができない場合はどうすればいいですか?
12月31日の前後のできるだけ近い日に棚卸を行い、その日から12月31日までの取引をもとに12月31日現在の棚卸高を計算します。その計算方法も明らかにしておく必要があります。
12月に納品して1月に請求する場合、どちらの年の売上ですか?
年内に納品していれば、請求前でもその年の売上です。国税庁の資料でも、12月21日〜31日に納品した分を12月31日付で売掛金として計上する例が示されています。入金が翌年でも変わりません。
令和8年分は書面の申告でも青色申告特別控除55万円を受けられますか?
受けられます。複式簿記で記帳して貸借対照表・損益計算書等を添付し、2027年3月15日までに提出すれば、書面でも55万円です。e-Taxで送信するか、優良な電子帳簿の要件を満たして保存し期限までに届出書を提出すれば65万円になります。令和9年分以後は、書面申告の上限が10万円になります。
家事按分は毎月計算しないといけませんか?
毎月でなくても構いません。国税庁の記帳例では、12月31日に使用状況に基づいて家事分をまとめて差し引く方法が示されています。割合は使用面積や点灯時間など適切な基準で決め、根拠を残しておきましょう。
まとめ
個人事業主の決算準備は、12月31日を基準日にした「締め」の作業です。年内に納品した売上と年内に債務が確定した経費を拾い、在庫を数えて売上原価を確定させ、固定資産台帳と家事按分を1年分整理する。ここまで年内に終えれば、2〜3月は申告書を作って出すだけです。決算が終わった帳簿や棚卸表などの決算関係書類は、原則として7年間の保存が必要です。
令和8年分は、書面の申告でも55万円の控除を受けられる最後の年です(e-Taxなら65万円)。令和9年分からは書面申告の上限が10万円になり、優良な電子帳簿で75万円を目指すなら1月1日からの帳簿の付け方が問われます。今年の締めと来年の準備を、同じ12月に済ませておきましょう。
参考資料(Sources)
- 国税庁 タックスアンサー No.2072 青色申告特別控除
- 国税庁「決算のしかた(青色申告編)」(PDF)
- 国税庁「記帳のしかた(青色申告編)」(PDF)
- 国税庁「優良な電子帳簿の保存又はデジタルシームレス保存により75万円の青色申告特別控除を適用しましょう!」(PDF)
- 国税庁 タックスアンサー No.2210 必要経費の知識
- 国税庁 タックスアンサー No.2100 減価償却のあらまし
- 国税庁 タックスアンサー No.2106 定額法と定率法による減価償却
- 国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表」(PDF)
- 国税庁 A1-17 所得税の棚卸資産の評価方法の届出手続
- 国税庁 所得税基本通達37−30の2(短期の前払費用)
- 国税庁 所得税基本通達45−1・45−2(家事関連費)
- 国税庁 タックスアンサー No.2020 確定申告


